M&Aの「案件ソーシング経験」とは何を指すのか|選考で見られている4つの中身と、未経験からの言い換え方

M&A業界の求人票を見ていると、必ず出てくる一語があります。「案件ソーシング経験者歓迎」。
ところが、この言葉が何を指しているかは会社によって驚くほど違います。ある会社では新規開拓そのものを指し、別の会社では提携先から持ち込まれる話を受ける仕事を指し、また別の会社では「話を持ってきたあと、成約まで手放さずに関係を保つこと」までを含みます。
同じ言葉なのに中身が違うので、面接で答えが噛み合わないということが実際に起きます。この記事では、ソーシングを4つの中身に分解し、それぞれで何が評価されるのか、そして業界未経験の職歴をどう言い換えれば伝わるのかを整理します。
目次

ソーシングとは、要するに何をする仕事か

ひとことで言えば、「まだM&Aを検討していない、あるいは検討し始めたばかりの会社と、最初につながる仕事」です。

M&Aの実務は、条件を詰めて契約に持っていく後半の工程がよく語られます。しかし、その手前に「そもそも案件が存在しない」という段階があります。売り手にとってM&Aは人生で一度あるかどうかの決断で、自分から相談に来る人は多くありません。

ここが、この職種の価値がはっきりしている理由です。後半の工程は、資格や専門性を持つ人に外から委託することもできます。ところが「まだ世に出ていない話に最初に触れる」ことだけは、代わりがききません。だから求人票に必ず出てくるし、報酬の設計もここに寄ります。仕事の全体の流れはM&A仲介・FASの仕事の流れにまとめています。

「ソーシング経験」は4つに分解できる

求人票の一語を、実際の業務に開くとこうなります。どれを求められているかで、面接で話すべき職歴が変わります。

中身 何をするか 評価されるもの 多い会社
① 新規開拓型 まだ接点のない会社へ直接アプローチする。手紙・電話・訪問 行動量と、断られ続けても続く耐性 仲介会社。とくに中小規模の案件を扱う先
② 提携チャネル型 金融機関・会計事務所・商工団体などとの関係をつくり、そこから話が来る状態を保つ 相手の立場を理解した継続的な関係づくり 提携網を持つ会社、地域に根ざした会社
③ 業界起点型 特定の業界を深く知り、業界内の動きから候補を組み立てる 業界知識と、業界内の人脈 特化型の仲介、業界担当を置くFAS
④ 買い手起点型 買いたい会社の要望を受け、条件に合う売り手を探しに行く 要望を条件に翻訳する力、探索の設計 買い手側につく先、事業会社のM&A部門

この4つは、必要な素養がまったく違います。①が得意な人が②で伸びるとは限らず、その逆もあります。求人票の「ソーシング経験」だけを見て応募すると、入ってから「思っていた仕事と違う」が起きるのは、ここが理由です。

面接で確かめるべきなのは「御社のソーシングは、この4つのどれに近いですか」の一問です。この質問は、業界を理解している人からしか出てきません。聞くこと自体が、こちらの解像度を伝えます。会社の規模による違いはM&A会社の規模の選び方にまとめています。

選考で実際に見られていること

1. 数字ではなく、続けた期間

「何件成約したか」は、もちろん聞かれます。しかし、それ以上に見られているのは「どのくらいの期間、同じ活動を続けたか」です。

ソーシングは、成果が出るまでの時間が長い仕事です。3か月で結果が出ないのが普通で、そこで折れる人が多い。だから、成果より先に「続いた実績」が確かめられます。

2. 断られたあと、どうしたか

この質問はほぼ確実に来ます。「断られました」で終わる答えと、「断られた理由を分けて考え、翌年もう一度接点を持ちました」という答えでは、評価が大きく変わります。

答えるときに入れておきたい要素

  • 断られた理由を、自分なりに分類していたか(時期が早い/相手が違う/こちらの伝え方)
  • 関係を切らずに残したか(M&Aは数年越しで動く話が普通にあります)
  • 次の行動を変えたか(同じやり方を繰り返していないか)

3. 相手の立場で話を組み立てられるか

とくに②の提携チャネル型で重視されます。紹介してくれる相手には、紹介する理由が要ります。「お世話になっているから」では続きません。相手にとって、その紹介がどんな意味を持つのかを説明できるか——ここが問われます。

4. 情報の扱いに神経を使えるか

ソーシングは、公になっていない情報に最初に触れる仕事です。「あの会社が売却を検討しているらしい」という情報が漏れることは、その会社の事業そのものに影響します。取引先が離れ、従業員が動揺します。だから選考では、情報の扱いに対する感覚が必ず確かめられます。前職で機密性の高い情報を扱った経験があるなら、それは職種が違っても評価される材料です。

未経験の職歴を、どう言い換えるか

「ソーシング経験なし」で諦める必要はありません。ソーシングは4つの能力の総称なので、そのどれかに当たる経験は、他の職種にもあります。

これまでの経験 近いソーシングの型 面接で言うべきこと
法人の新規開拓営業 ① 新規開拓型 件数より継続期間断られたあとの再訪の話
金融機関での法人担当 ② 提携チャネル型 経営者と一対一で話した経験。決算の数字を読んだ経験
会計事務所での業務 ② 提携チャネル型 顧問先の経営者から相談を受ける立場にいたこと
特定業界での事業経験 ③ 業界起点型 その業界の構造と、いま何が起きているかを自分の言葉で
事業会社の経営企画 ④ 買い手起点型 要望を条件に落とし込んだ経験と、社内の合意形成
人材・不動産などの仲介業 ①②の複合 売り手と買い手の間に立った経験そのもの
いちばんもったいないのは、職務経歴書に「新規開拓」とだけ書いて終えることです。読む側は、その一語からソーシングへの適性を読み取れません。何年続けたか、どういう相手に、どうやって接点を作ったか。ここまで書いて初めて、同じ能力として伝わります。書き方はM&A業界向けの職務経歴書の書き方にまとめています。

入る前に知っておいたほうがいいこと

ソーシング中心の職種を選ぶときの確認点

  • 成果の測り方。接点の数か、面談化か、成約か。どこで評価されるかで日々の動き方が変わります
  • 報酬に占める変動部分の割合。会社によって設計が大きく異なります
  • 後工程を自分がやるのか、引き継ぐのか。最後まで担当する会社と、分業の会社があります
  • 提携先の網が、すでにあるのかこれから作るのか。②の型では、ここが働きやすさを決めます
  • 立ち上がりに何か月見てもらえるか。成果が出るまで時間がかかる職種だからこそ、先に聞いておく価値があります(→M&A業界に入って最初の半年
労働時間の実際も、あわせて確認してください。ソーシングは相手の都合で動く仕事なので、時間帯が読みにくくなりがちです。「忙しい」の中身は会社によって違います(→M&A業界の労働時間の実際)。

まとめ

この記事の要点

  • ソーシングは「まだ表に出ていない話に最初に触れる仕事」。代わりがきかないから重視される
  • 「ソーシング経験」は①新規開拓 ②提携チャネル ③業界起点 ④買い手起点の4つの総称
  • 求められている型が違えば、話すべき職歴も違う。面接で「どの型か」を確かめる
  • 選考で見られるのは件数より続けた期間・断られたあとの行動・相手の立場・情報の扱い
  • 未経験でも、4つのどれかに当たる経験はある。言い換えて伝える
  • 入る前に成果の測り方・報酬の設計・後工程の担当範囲・提携網の有無・立ち上がり期間を確認する

「自分の経験は、どの型のソーシングに近いのか」——ここは一人で判断しにくい部分です。
ご経歴を伺ったうえで、どの型の求人なら評価されやすいか、いま応募すべきか経験を足してからかを含めてお伝えします。見立てとして「今はまだ早い」となる場合も、そのままお伝えします。まずはキャリア相談・転職支援へどうぞ。採用ご担当者さまは採用支援サービスをご覧ください。

本記事の職業紹介サービスの提供主体は株式会社Global Platform Japanです(有料職業紹介事業 許可番号:13-ユ-311561)。本記事は、M&A業界における案件開拓業務の一般的な整理を行ったものであり(確認日:2026-08-02)、職種の名称・担当範囲・評価制度・報酬の設計は企業によって大きく異なります。特定の企業の内容を保証するものではありません。労働条件の詳細については、必ず各社から提示される書面をご確認ください。運営会社の詳細は運営会社・ポリシーをご覧ください。

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